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白と水色の表紙

書籍名

地方債の経済分析

著者名

持田 信樹、 林 正義 (編)

判型など

272ページ、A5判、上製カバー付き

言語

日本語

発行年月日

2018年12月

ISBN コード

978-4-641-16532-8

出版社

有斐閣

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地方債の経済分析

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eBook

本書が対象とする地方債とは、都道府県や市町村等の地方公共団体 (以下、「地方」と略) による借入で、その債務の返済が年度を超えて行われるものである。国債と同様、地方債は、耐用年数の長い公共インフラ等を建設するための費用を建設時の住民だけではなく将来の住民にも負担させる仕組みでもあるが、その一方で、経常経費の財源不足を充当する為の仕組み~いわゆる「赤字債」~でもある。本書では、『地方債の経済分析』という題名の通り、そのような地方債にかかる問題に経済学的分析を適用している。地方債について海外では経済学的研究が活発に行われているにもかかわらず、日本では制度的な実態記述が中心で経済学的研究が十分に蓄積しているとは言いがたい。本書ではこのギャップを埋めるべく、今までの地方債にかかる内外の経済学的な諸研究を整理?紹介するとともに、いくつかの問題について実証分析を行っている。
 
もちろん適切な制度?実態の把握なくしては適切な経済分析は行うことはできない。この点に鑑み本書では、近年大きく変化した地方債をめぐる環境や制度を辿り、地方が直面する課題を浮き彫りにするよう務めた。2000年代では地方債の発行に関して「自由化」が進められた。地方財政健全化法 (2008年度施行) を通じ地方の債務状況を表す指標が整備されるとともに、許可制から同意制 (2006年度)、さらに届出制の導入 (2012年度) へと制度が移行した。地方債の引受に関しても財政投融資改革 (2001年度) 以降、政府資金に対して民間資金の役割が増大している。民間資金に関しては、債券市場で発行される公募債が増加するとともにその発行条件が多様化し、その一方で、債券市場を通さない銀行等引受も多様化の動きがある。このような変化の中、低い金利で地方債を発行し、長期的な資金を安定的に確保するためには、職員の金融リテラシーや地方の「信用力」が従来よりも重要になっている。
 
このような実態の変遷と課題にかかる研究には、広範囲なステイクホルダー~制度設計者としての国、発行体としての地方、引き受け手としての金融機関~に対する調査が必要になる。この点に関しては、筆者達が企画?参加した、東京大学経済学部に設置された地方公共団体金融機構寄付講座と、科学研究費基盤研究「地方債の動態的実証分析」における研究活動が大きく貢献している。前者では6年半にわたり25回のフォーラムと3回のシンポジウムを開催し、そこでは国、地方、金融機関からの関係者を中心とした延べ2500人を超える参加者からの様々な「生の声」を得ることが出来た。後者では、都市銀行や地銀から農協や信用金庫までを対象にした大規模なアンケート調査を実施した。我々の知る限り同アンケートに比類する調査は行われておらず、本書では同調査の貴重性に鑑み、その集計結果をそのまま巻末に掲載している。
 

(紹介文執筆者: 経済学研究科?経済学部 教授 林 正義 / 2019)

本の目次

第1章 地方財政における地方債の意義 〔持田信樹〕
第2章 地方債制度と国の関与の変遷 〔橋都由加子〕
第3章 地方債の市場化と多様化 〔天羽正継〕
第4章 地方債の投資家とIR 〔天羽正継,橋都由加子〕
第5章 地方債の信用リスクとスピルオーバー 〔石田三成,中里 透〕
第6章 依頼格付け取得の効果 〔石田三成〕
第7章 銀行等引受債の経済分析 〔石田三成〕
第8章 地方政府債務の持続可能性 〔持田信樹〕
第9章 地方債の経済分析──展望 〔林 正義〕
資料編 地方債の動態的実証分析──アンケート調査 〔石田三成,橋都由加子,天羽正継〕
 

関連情報

書評:
Reader’s Library (『ガバナンス』 2019年4月号)
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9969
 
Books (『地方自治職員研修』 2019年3月号)
https://www.koshokuken.co.jp/publication/gekkanshi/honshi/20190318-282/
 

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