東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

赤い表紙に地図の線画

書籍名

Education in the Asia-Pacific Region: Issues, Concerns and Prospects Education in Japan a comprehensive analysis of education reforms and practices

著者名

Yuto Kitamura, Toshiyuki Omomo and Masaaki Katsuno (Eds.)

判型など

241ページ

言語

英語

発行年月日

2019年

ISBN コード

978-981-13-2630-1

出版社

Springer Singapore

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学内図書館貸出状況(OPAC)

Education in Japan

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日本の教育対する関心は、とくに高度経済期以降、長年にわたって海外の教育関係者たちの間で持たれ続けている。たとえば、1980年代には日本の子どもたちの高い学力水準が国際的な注目を集め、1990年代に入るといじめや不登校、教育格差といった諸問題についても知られるようになり、近年では日本型教育モデルへの関心が高まっている。しかしながら、日本の教育の実状について、必ずしも十分な情報が国際的に発信されてきたとは言えない。そうした問題意識にもとづき編纂したのが、本書である。
 
本書は、大学院教育学研究科に所属する教員たちによって、今日の日本の教育を複層的な視点から描き出そうとした試みである。本書は2部構成であり、第1部の各章では、日本の教育をできるだけ俯瞰的に紹介することを目指した。そのために、歴史的な変遷を踏まえつつ、教育段階 (初等?中等?高等教育ならびに生涯学習) ごとに、どのような特徴があり、いかなる課題に直面しているのかについて論じた。そして第2部では、日本の教育への理解をより深いものとするため、テーマ別の章構成とした。この第2部では、教師たちのナラティブ、授業研究、英語教育、大学改革、若者の間の格差問題、外国にルーツをもつ子どもたちの教育、ESDといった多様なテーマについて論じた。本書の各章を通して、できるだけ最新の研究成果にもとづき執筆することで、日本の教育学研究の一端を海外の読者に提示することを目指した。
 
これまで、日本の教育に関する学術書としては、主に教育社会学者たちによって書かれたものや、海外の日本研究者たちによって執筆されたものが多く、分野やテーマに偏りが見られ、日本の教育の多様な側面が描かれてきたとは言い難い。そこで、本書では比較教育学や教育社会学の視点に加えて、教育史、教育思想、教育方法、言語教育など、教育学のさまざまな領域の専門家たちが、これまで英語で書かれることの少なかったテーマにも果敢に挑戦し、日本における教育学研究の豊かな知見を発信することを目指した。 (ただし、一冊の本で教育学の幅広い領域をカバーすることはもとより不可能であり、とりわけ教育心理学や身体教育学などの分野に関する章を加えることができなかったことを、編者の一人として率直に反省している)
 
このような目的をもって編まれた本書は、一義的には海外の研究者や教育関係者たちで、日本の教育に関心を持つ人たちの基本書となることを企図している。また、日本で教育学を勉強することを目指している海外の学生たちに、留学前にぜひ本書を読んでいただき、日本の教育学研究について理解を深める一助となることを目指している。さらに、日本の学生や研究者たちにとっても、日本の教育学研究の成果を海外の読者を意識して英語で書いた場合、どのような問題設定や議論の展開があり得るのかということを理解する手がかりになるだろう。それは、日本の教育学研究を見つめ直すきっかけにもなるのではないか。
 
本書をささやかな一歩としたうえで、今後は大学の枠を越えて多くの教育学研究者たちと協働しながら、日本の教育学研究の知見をさらに国際発信していきたい。
 
(本稿は、『比較教育学研究』第60号 (2020年) 掲載の「文献紹介」(210頁) に大幅な加筆修正をしたものである)
 

(紹介文執筆者: 教育学研究科?教育学部 准教授 北村 友人 / 2019)

本の目次

1. Background and context of education system in Japan (Yuto Kitamura)
 
Part 1  The education system in Japan
 
2. Primary and Secondary Education (Toshiyuki Omomo)
3. Higher education in Japan: Its uniqueness and historical development (Hideto Fukudome)
4. Restructuring of social education and lifelong learning, and community governance (Jeongyun Lee)
5. National and local educational administration (Yusuke Murakami)
 
Part 2  Educational issues in Japan
 
6. The relationship between teachers' working conditions and teacher quality (Masaaki Katsuno)
7. Lesson study (Yasuhiko Fujie)
8. Teacher narrative description (Sachiko Asai)
9. A history of schools and local communities in modern Japan (Yoshihiro Kokuni)
10. Background of "Individualised Meritocracy" among Japanese youth: Social circulation model of post-war Japan and its collapse (Yuki Honda)
11. Discussing the "Multicultural" in Japanese society (Ryoko Tsuneyoshi)
12. Higher education reform: Focusing on national university reform (Akiko Morozumi)
13. English language teaching and learning in Japan: History and prospect (Yoshifumi Saito)
14. Safety education from the perspective of Education for Sustainable Development (ESD) (Yuto Kitamura)
Postscript: Toward education that truly enhances people's wellbeing (Yuto Kitamura)
 

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