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五神総長メッセージ ― 日本学術会議の会員任命について ―

掲載日:2020年10月9日

日本学術会議の会員任命について

日本学術会議が内閣総理大臣に推薦した会員候補者のうち、6名の任命が見送られ、その候補者をいかなる理由によって任命しなかったのかが、同会議に対し明確に説明されない事態となっています。これに端を発した混迷は、学術が持つべき本来の力を大きく削ぐものであり、さまざまな局面で学術の発展を担ってきた東京大学を代表する者として憂慮するとともに、新たな責務を感じています。

日本学術会議は、「人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与する」日本の科学者の代表機関として、日本学術会議法にもとづいて設立されました。科学の向上発達を図り、行政?産業及び国民生活にその学知を反映浸透させることを目的に、政府からの科学振興施策の諮問を受け、活用?育成の諸方策を勧告するなどの活動を行う、独立性の高い機関です。私自身も、学術情報の電子化出版や光科学推進に関わり、行政?産業界を含めた幅広いセクターの方々との連携協力の議論が、問題解決に向けての新たな展開と研究力の向上に大きく貢献したことを体験しています。

今、世界の政治経済情勢が急激に変化し、ときに科学の力が軽視されるなかで、学術諸分野の対話?協働と多様な学術と社会をつなぐ機関の役割は、グローバルにもますます重要になっています。喫緊の新型コロナウイルス感染症対策にしても、生命科学や理学?工学だけでなく、人文学?社会科学を含めた諸学の科学的な知見を結集し、人類の安全や幸福のために多様な学知の価値を最大限に活かしていくことが期待されています。

多様性と包摂性の共存を図る努力を重ねる中から、対立や分裂の危機を乗り越える智慧と、それまでにない発見や協創を生みだす基盤が形づくられます。そうした異なる価値観に開かれた態度こそが、人類の未来に向けた新たな社会づくりへの推進力です。いま日本社会が突きつけられているグローバルな諸課題と正面から向かいあい、分断や排除や孤立が引き起こす不幸を超克するためには、まず異なる立場の存在を認める寛容を出発点にして、誠実なことばによる相互理解と信頼の構築がなによりも重要だと考えます。

冷静な論議をじっくり深めていくことが必要です。学術コミュニティとしても、それぞれが今なすべきことについて議論を深め、社会から学術に寄せられている期待と信頼に応えるために努力していかねばなりません。同時に、日本学術会議の置かれた状況が早く正常化し、求められている役割を果たすことができるよう、同会議からの要請に対する真摯な対応を、政府には望みます。そして学術のもつ価値が少しでも多くの国民のみなさんから共感され、反映浸透することを切に願っています。それが可能となるような環境の創造に、東京大学もまた、総合力を活かして取り組む所存です。

東京大学総長
五神 真

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